第3章 薄月
大野はただ、アイスカフェオレの入ったグラスを見ていた。
何を思っているのか…表情からは読めなかった。
「確かに…体調不良で欠席したにも関わらず夜間の外出や、服装のこと…問題はありました」
「はい、私どもの教育が行き渡っておりませんで…」
「お父さん。大変言いにくいんですが…」
「なんでしょう?」
なんか…この父親…
やたら威圧してくる…?
見た目は優男って感じで、ガタイもそんなに良いほうじゃない。
なのに、目でこの場を支配しようとしていると言うか…自分の思う通りに話を持っていこうとばかりしている。
「学校ではなく、このような場でお話させていただくことは、例外的なことなんです」
なら、こっちだって…やってやろうじゃねえか。
丹田に力を入れた。
俺の前で、あんなに泣いた大野の…
少しでも心を開いてくれた大野の信頼に応えねばならない。
「と、言いますと…?」
「本来なら、生徒の生活指導も含めた保護者との面談は学校で行います。しかし今日は、大野の…智くんのために、私は学校に報告せず、ここにおります」
「……どういう、ことでしょう?」
少し声が強くなった。
気が短いのか。
「大野…」
声を掛けると、大野は顔を上げた。
まっすぐ、俺のことを見た。