第3章 薄月
しばらく、涙が止まらなかった。
先生は、顔を見るでもなく…
気を使ってくれてるのか、ちょっと顔を逸して待っててくれた。
喉の熱い塊がなくなって。
だんだん心臓がバクバクするのが落ち着いた頃。
涙がやっと止まった。
「すんません…ハンカチ…」
「ああ。気にすんなよっ」
明るく言って、俺の手をハンカチごと両手で握った。
「…話せそうか…?」
「……」
どうしていいのか…わからない。
「じゃあ、ご家族の誰かと一緒なら…?」
「…え…?」
「昨日の友達でもいい。誰か信用できる人と一緒なら、話せないか?」
すごく…すごく、先生が俺のこと考えていてくれるのが伝わってきて…
この人になら…
”信用できると思う…”
カズヤ、すげえな。
なんでわかるんだろ。
「…父さん…父と、なら…」
そうだよ…
父さん
あんたも男だから
逃げ回ってたら、だめだと思う
だから、父さん
俺に向き合ってよ
「ああ…そうか…」
先生は、テーブルに乗ってたバインダーを取りに行った。
それをペラっとめくると、何かを確認してる。
「じゃあ、お父さんの携帯に連絡させてもらうぞ?」
先生がしっかりと俺の目を見て言ってくれた。