第3章 薄月
ふうっとまた息を吐いた。
テーブルに手を乗せると、コツコツと爪で弾いてる。
その間、俺のことじっと見てる。
「それに、あの時間…店やってないだろ…」
「別に…どんな店でもよかったし」
「こんなに金貰ってるのに?」
答えられないでいると、更に櫻井は突っ込んできた。
「じゃあ、殴ったのは誰だ」
やっぱり来るんじゃなかった。
そう思って立ち上がろうとしたら、腕を引っ張られて引き戻された。
「わかった。質問を変えよう…」
そう言って、またくいっとメガネを上げた。
「なにか悩みがあるよな?」
すごく断定的な言い方だった。
ほとんど櫻井は、確信を持ってるようだった。
「別に…悩みなんか…」
「俺ができることは、あるか?」
「え…?」
「……俺は、大野を助けたいと思ってる」
心臓が、一瞬止まったかと思った。
櫻井は少し俯いて…眼鏡にかかった前髪を指でずらした。
そして俺と目線を合わせるように、少し顔を上げた。
「ただ…無理やり、大野の心を踏み荒らすようなことは…正直したくない」
すごく、真剣に…櫻井は俺を見つめている。
じいちゃん…
助けて…
俺、このままだと…
「先生…」
「ん…?」
「俺…」
言ってしまう