第3章 薄月
なにガキみたいなことしてんだ、俺…
なんかもう…カズヤのせいで、昼から何も考えることができなかったし、気が抜けた。
櫻井がしてくるであろう、嫌な質問に身構える準備すらできてなかった。
「よく…来てくれたな。で、話してくれる気になったか…?」
櫻井はテーブルを回り込んで、俺の隣の椅子に腰掛けた。
俺も、無理やり座らされた。
くいっと銀縁のメガネを上げて、俺の目を覗き込んでくる。
「なんで殴られたのか。なんで革靴がないのか。昨日の友達はどういう関係なのか」
答えず、制服のズボンの後ろポケットに手を突っ込んだ。
長財布を取り出すと、今朝貰った金を取り出した。
10枚ほど出てきたそれを、櫻井はぎょっとした目で見てる。
「…これで、これから靴を買いに行く予定」
「……は?」
「昨日、友達が靴買いに行くの、つきあってくれてたけど、先生が声掛けてきたから、行けなかった」
「……へ?」
金と俺の顔を交互に見て、どうやら俺の言ったことをやっと理解したようだった。
「…昨日の朝まで履いてた靴はどうしたんだ」
「……うんこ踏んだ」
「……それは、嫌だな」
ちょっとだけ黙ってから、深い深いため息をついた。
「…嘘だろ?」
「ホントだって…」
「うんこなんか、今の日本…そんな気軽に落ちてないだろ」