第3章 薄月
「失礼します…」
英語研究室のドアをノックして、中に入る。
いつもは英会話部が放課後は部活してるって聞いてたけど…
今日は部活日じゃないのか、櫻井は一人だった。
会議用テーブルが4つ。
教室の中央に固めて置いてあって、ぐるりと回りにパイプ椅子が置いてある。
テーブルの隅っこには、櫻井がいつも持ってるバインダーが置いてあった。
窓辺に立って外を見ていた櫻井が、こちらを振り返った。
「おう。よく来たな。座れ」
そう言って、会議用テーブルの角っこのパイプ椅子に座った。
俺は、わざと対角の角っこの椅子に座った。
「いじわるすんな…」
ちょっと情けない顔してる。
メガネの奥の目がしょぼしょぼしてる。
「ぶっ…」
なんか大人がそんな風に物を言うのが面白くて。
思わず笑ったら、「お?」って顔した。
…嬉しそうな顔、してんじゃねえよ…
ゴホっと咳をすると、櫻井は立ち上がろうとした。
だから、先に立ってやった。
「……?」
「……」
「…?…?」
怪訝な顔をして、俺を見ている。
俺もじっと櫻井を見てやった。
しばらく、にらみ合いが続いた。
「なにやってる…?こっち来て座りなさい」
目…逸らさなかった。
カズヤの言ってること、合ってた。
だからなんだって話なんだけど…