第3章 薄月
「行こ?智…」
青ざめてるそいつをほっぽって、カズヤは俺の腕を取って階段を降りた。
いつのまにか、階段下の踊り場にはギャラリーがいた。
こっちを好奇の目で見てる。
カズヤはその人垣をかき分けて、二階の廊下を進んでいく。
「ありゃあ、いじめられるだけあるわ。性格わるっ…被害者面しやがって」
ケラケラ笑いながら、歩いていく。
「助けられたのに、八つ当たりかよ…ほんっと性格ネジ曲がってんな…」
「いや、おまえだって相当だろ…」
「あら?そう?」
ぐふっと笑うと、やっと腕を掴んでた手を離してくれた。
「でも、俺だったらあんなことさせないよ?」
にたりと笑うと、教室に入っていった。
「あ」
くるりと振り返ると、すんごい近くまで顔を寄せてきた。
「ねえ…童貞にあれはキツかったかなあ?」
「ぶっ…」
「チンコ勃たないとか、トラウマになる?」
「…ならねーだろ…」
ぶぶっと笑ってカズヤは目を逸らした。
「…殴られたら…チンコ勃つの?」
「……え?」
「さっき、わざと殴られようとしてたでしょ?気持ちいいの?」
「な…なにを…」
「智って…マゾ?」
カズヤが俺を気の毒そうな目で見てる。
ヤメロ…
「…誤解だ…」