第3章 薄月
バタバタと3人は逃げていった。
隅っこで丸まってるやつは、怯えた顔で俺を見上げた。
「…あんたも…やり返せよ…」
思い切り、蔑んだ目で見た。
なんでやり返さねえんだよ…
なんで…
イライラする
背中に思い切り、内履きの足跡がくっついてる。
「お…おまえになにがわかるっ…」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を隠しもせず…
そいつは俺のこと怒鳴りつけた。
…そんな元気あるのに…なんで逃げないんだろ…
「はいはい。もういいでしょ?智」
階段を上がってきたのは、カズヤだった。
さっき叫んだのも…こいつか…
「せっかく……」
「ん?」
「…邪魔すんなよ…」
「は?なんの?」
カズヤは踊り場まで上がってくると、丸まってるやつの腕を取って立ち上がらせた。
「仁科…」
「あら?俺のこと知ってるの?俺ってば、ゆうめいじーん…」
クスクス笑いながら、そいつの制服の埃を手で払った。
「保健室行く?」
その言葉に、そいつはハっと身体を固くした。
「さっ…触るなっ!ホモのくせにっ!」
「おっと…ごめんね?先輩…」
戯けて、ぱっと手をホールドアップした。
「でも大丈夫だよ?俺、先輩みたいなウジ虫にチンコ勃たないから」
そいつの顔が、すーっと青ざめていった。