第3章 薄月
階段の昇降口に差し掛かった時、小さな悲鳴が聞こえた。
嫌な予感がした。
でも、この階段を通らないと、教室に戻るには大回りしなきゃいけない。
それも面倒くさかったから、階段を上っていった。
二階について、ふと上を見た。
二階と三階の間の踊り場に人の影が見えた。
「やめて…」
小さく、誰かの悲鳴みたいな声が聞こえたかと思ったら、何かを蹴るような鈍い音が聞こえた。
呻くような声と、複数の小さな笑い声。
なんだか、訳がわからなくなった。
頭に血が急激に上ったかと思ったら、階段を駆け上がっていた。
「うわっ…」
「なんだよ!テメエ!」
知らない顔だったけど、ネクタイの色…三年生だ。
頭の良さそうな…でも、意地の悪そうな。
普通のやつら。
踊り場の隅っこで身体の小さな男子が倒れてる。
それを囲むように3人…
「なんだよ…行けよ!二年が!」
「見てんじゃねえよ!」
やたら強気な一人が俺の胸ぐらを掴んできた。
「…離せよ…クソが…」
「ああ!?」
「集団にならないと、暴力も振るえない…クソ野郎だろ?」
「なんだと!?」
「テメエ!」
胸ぐらを掴んでたやつが、拳を振りかぶった。
そうだ
殴れよ
それでいい
「せんせーーーー!こっちですーーーー!」
階段の下から、誰かが叫ぶ声が階段室に響いた。