第3章 薄月
「よーし、じゃあ決まったな」
二人が大人しくなってしまったので、やるとも言わないまま看板リーダーとサブリーダーは決まった。
後の役員は大まかに決まっていたから、体育委員に班割りを任せて一限目は終わった。
「ああ。大野」
「はい?」
チャイムが鳴って、仁科になにか文句を言おうとしていた大野は面倒くさそうに俺を見た。
「放課後、話があるから。英語研究室に来なさい」
「は…?」
「おまえの今日の登校時の靴は校則違反だ。生徒指導部で問題になるかもしれないから、来なさい」
そう言うと、すぐにその場を離れた。
今日こそは…少し脅しをかけてでも捕まえてやる。
少しずつだが、大野と距離を詰めていくしかない。
そう昨日は結論づけた。
だから大野…
逃げるなよ
それから昼休みに入って、学食で定食を食って職員室に戻った。
職員室に入ると、大野が追いかけるように入ってきた。
「あのっ…櫻井先生…」
「あ?どうした?飯食ったのか?大野」
「いえ、まだ…」
「なんだ。急ぎの用か?」
大方、放課後来れないとか言い訳しに来たんだろう。
律儀なやつ…
席について大野の方に体を向けると、ボソボソと喋りだした。
「靴…その、すいませんでした…」
しおらしく、頭を下げた。