第3章 薄月
職員室に戻り、SHRの準備をした。
今日はそのまま1限目は、6月の体育祭の役員決めのLHRの予定だから授業の準備はしなくていい。
「っしゃー…」
小さく気合を入れると、バチンと頬を両手で叩いて立ち上がった。
「いでーーーー!!」
額の傷のことをすっかり忘れていた。
痛い。響いた。アホだ俺。
ぐわんぐわんする頭を抱えてしゃがみこんでいたら、後ろから脇に手を突っ込まれて、すんごい力で引っ張られて立ちあがらされた。
「す、澄岡さん…」
キラリとメガネに窓からの光が反射した。
「今日は理事長が来ています。お静かに」
「あ、こりゃどうも…」
校門当番に出ていると、連絡事項が伝わってくるのが遅くて。
大抵、職員連絡メールには乗っかって来るんだが、メール当番の先生が、パソコン不得意な古株先生だと遅れてくる。酷いと昼頃に来たりする。
ここのところは澄岡さんのお陰で、ピンポイントに大事な情報には乗り遅れずにすんでいるが…
「早く、お行きなさい」
なんかマンホール女優みたいな台詞を残して、澄岡さんは席に戻っていった。
「あ…あざす…」
少しじんじんする額を擦りながら、2年E組へと急いだ。