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裸の月【気象系BL】

第2章 寒月


「なに…?」
「智さあ…今はだめかもしんないけど…」
「え?」
「誰かに言ったほうがいいよ」
「…なにを…」
「言わなきゃ、わからないから」

そう言って、俺の頬を指差した。

「黙ってても、誰もわからないから」

そう言うと、にっこり笑って。
俺の肩をふんわりと押した。

「おやすみ、智。また明日」
「…おやすみ…カズヤ…」

ドアを閉めると、セダンはスルリと走り出した。
遠ざかるテールランプを、呆然と眺めた。


言わなきゃ…わからない…
黙ってても…わからない…


どうして…あんなこと言うんだろう。

「あ。ごちそうさまいうの忘れた…」

パパとカズヤの仲睦まじい姿を思い出した。
男同士だけど…嫌悪感なんか湧かなかった。


むしろ…羨ましい…

俺にもあんなふうに話せる人が居たら…


そう思ってたら、不意に櫻井の顔が浮かんで。

「チッ…」

曇った眼鏡と額のガーゼを思い出したら、ちょっと笑えたけど。

「うっぜえ…」

なんなんだよ…
俺のこと、急に構いやがって…

偉そうに…俺のことなんにもわかんないくせに


家にそっと戻ったら、出たときとなんにも変わってなかった。
真っ暗なリビングを過ぎて、部屋の前まで来た。

ドアの前になんか置いてあった。


お粥の入った小さな土鍋の乗った、トレーだった。


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