第2章 寒月
なんだか不思議な時間だった。
別にカズヤとパパはイチャイチャするわけでもない。
でも、このふたりは男同士なのに、恋人なんだとわかる。
カズヤはパパのこと信頼しきって頼ってる感じだし。
パパは大人で、カズヤのわがままもまるごと包んでる感じ。
高そうな、居酒屋みたいなとこに連れてかれて。
俺たちが高校生だから、気を使って個室みたいなとこに入れてもらった。
「サトシくん、もっと食べなよ」
俺のことまで気にかけてもらって…
そんなパパのことを、カズヤは嬉しそうに見てる。
恋人同士の時間を邪魔してる気がして、居心地が悪かった。
「俺、夕飯食べたんで…」
早く帰りたくて、嘘ついてしまった。
「まあ、遠慮しないのっ」
そう言って、無理やりカズヤは俺の皿にモリモリ盛ってきた。
「こんな食い切れねーわ…」
「ぶーっ…」
俺が困った顔してのが面白いらしくて、カズヤはずーっと笑ってた。
飯が終わって、そのまま真っすぐ家まで送ってもらった。
「あ、この辺で…」
「そお?」
車を大通りからちょっと入った枝道で停めてもらって。
礼を言って降りようとした。
ぐいっと腕をカズヤに掴まれた。