第2章 寒月
気がついたら、カズヤに腕を引っ張られて歩いてた。
駅構内から地上に降りたらすぐ、車が横付けされた。
車の種類なんてわからないけど、高級そうなセダンだった。
「家、どこ?」
「ああ…」
カズヤに手を引かれて、後部座席に乗り込んだ。
「パパ、見附のほう向かって」
「わかった」
パパと呼ばれた人は、ちらりとこちらを振り返るとまた笑った。
「いいとこ住んでるんだね。智」
「別に…親の家だし」
「ふうん…」
「…カズヤは…?」
「俺?俺んちは新宿駅の近く。親の家は、花園神社のほう」
「は…?」
ニッコリ笑うと、俺の頬を指差した。
「ここ、どうしたの?」
「え…ああ…」
ちょっと熱を持ってる。
少し腫れが酷くなったのかな…あんなに走ったから。
「…家の人?」
ドキっとした。
なんで、わかるんだ。
櫻井はわからなかったのに…
「…そっかあ…」
カズヤはそれ以上は深く聞かなかった。
「ねえ、パパ。どっかでご飯食べていこうよ」
「え?いいの?サトシくんは、お家帰らなきゃじゃないの?」
「ううん。いいみたい。ね?智」
「え…」
帰りたくないんでしょ?
カズヤの目がそう言ってた。
見透かされて、なんだか恥ずかしくて。
窓の外を見たら、地下鉄の窓みたく真っ暗だった。