第2章 寒月
side O
今度は、追いかけてこなかった。
連絡通路の出口から後ろを振り返ったけど、あいつはいなかった。
少しほっとして…
丸い柱に寄りかかると、頭痛がした。
目を閉じて、その頭痛をやり過ごそうとしたけど、ぐるぐる頭の中で血が回ってる感覚がして。
なんだよ
なんなんだよ
放っといてくれよ
「智?」
誰かに肩を掴まれた。
目を開けると、柴犬がいた。
「どしたの?こんなとこで…」
まじまじと見ている黒目がちな目…
あ、犬じゃねえ。人間だ。
「気分でも悪い?」
制服を着たカズヤだった。
…なんでこんなとこに居るんだ…?
「…別に…大丈夫…」
「でも、顔色悪いよ?」
「平気」
寄りかかってた柱から身体を起こすと、カズヤに背を向けた。
「ねえ、家まで送ろうか?」
「は?どうやって…」
「パパが車持ってるから」
振り返ったら、カズヤの後ろにリーマンが居て。
俺と目が合うと、少し笑った。
「カズヤの友達?」
「うん。そう。クラスメイト」
「へえ…」
こいつが…パパ…?
って、親父って年じゃねえだろ。
「ああ…」
俺の疑問に気づいたのか、カズヤはにっこり笑った。
「俺の、恋人だよ」
「え…?」