第2章 寒月
「別に…友達なんかいらねーし」
おお…!出た!思春期特有の強がり!
教科書どおりの反応をしてくれる大野に、ますます嬉しくなってきた。
「さっきの子は、友達じゃないのか?」
「あれは…その…友達、だけど…」
「なんでも言える友達なのか?」
「関係ないだろ、アンタには」
そう言って、睨みつけてくるが…
これも教科書どおりの思春期男子の反応だ。
「なんでも言えばいいってもんじゃねえだろ…」
「え?」
「全部言わないと、友達になれねーの?」
「いや…そんなことはないが…」
「じゃあ別に、なんでも言えなくてもいいじゃん」
…鋭いな…
大野は、頭がいいんだよな…
学校の成績云々ではなく、ちゃんと物事をこいつなりに理解してるっていうか…
本質を、見てるんだよな。
「それに学校の中に友達がいなきゃいけないってこともないだろ?」
「それは、そうだな」
同意してやると、言い負かしたと思ったのか、ちょっと満足げな顔をした。
「…じゃあ、これだけ教えてくれ。その顔、どうしたんだ?」
「…これは…」
隠すように顔を背けた。
「ぶつけた」
「嘘言うな」
「嘘じゃねえよ」
「…殴られたんじゃないのか?」