第2章 寒月
「じゃあどうしたんだ!ちょ、ちょっと止まれ!」
なんか息が切れてる。
体力ねえな…
「なんか用事があってここにいたのか?答えなさい!」
それ聞いてどうすんだよ…
「じゅ、塾とかなら、先生見逃すぞ?」
人混みを縫いながら、駅に向かう。
櫻井はあまり人混みが得意じゃないみたくて、ワタワタしながらついてくる。
そんな姿を見てたら、さっきは邪魔されてムカついたけど。
だんだん、そんな気持ちも薄れた。
一生懸命…なのは、わかったから…
スクランブル交差点で止まったら、やっと櫻井は俺に追いついてきた。
「…さっきのは、友人なんだな…?」
「はい。中学の同級生です」
「え…?ということは、中等部に居たのか?」
あ、まずいこと言ったかな…
松本に迷惑にならないようにしないと。
中等部の卒業名簿なんて、高等部の教師が見れるかどうかわからないけど…
違う敷地にあるから、教師同士の交流はあまりないはずだし。
このまま黙ってれば、松本に迷惑をかけることはないだろう。
「大野?答えろ」
「……」
黙ってやり過ごそうとしたけど、今朝からこいつ…
なんかしつこい。
昨日まで、そんなに俺のことなんて気にしてなかったのに。
なんだかそれも、癪に障ってイラついた。