第2章 寒月
「俺、帰るから」
「は?」
「だからもういいだろ…?」
本当は帰りたくないけど…
松本を巻き込みたくなかったし。
櫻井はしつこそうだし。
だから大人しく家に帰ることにした。
松本が人混みに消えるのを確認して、駅の方へUターンした。
「大野、ちょっと待て」
人垣が、こっちを面白そうな顔して見てる。
俺が補導員にでも補導されてるように見えるんだろう。
俺のこと捕まえようとしているのをニヤニヤした顔で眺めてる。
「…なに…?」
見世物になるのはごめんだったから、歩き続けた。
櫻井は慌てて後をついてくる。
「だから、体調は…もういいのか!?」
体調…?
ああ…もしかして母さんがなんか言ったのかな…
「具合が悪いから家で寝てるって、お母さんが言ってたんだぞ?なんでこんなところに居る?」
ああ…もう面倒くさいなあ…
少し立ち止まって後ろを振り返った。
コンビニの前で、路上は明るい。
櫻井が俺の顔見て、少しぎょっとした顔をした。
「大野…これ、どうしたんだ…」
俺の腫れてる頬を触ろうとしてきた。
「っ…触んなっ…」
思わず、振り払ってしまった。
「大野…ちゃんと言いなさい。さっきの子と喧嘩したのか!?」
「違うって…」
振り払うように歩き出しても、櫻井はしつこい。