第2章 寒月
飯を食い終わった頃に母親と妹が帰ってきて、さんざんガーゼのことで笑われた。
居心地が悪いので、長居しないで帰ってきた。
「絶対今日は仏滅だ…」
ブツブツ言いながら新宿まで戻る。
駅構内で乗り換えをしようと歩いていると、うちの学校の制服を着ている生徒がちらほら見えた。
塾通いをしている連中が帰る時間なのだろう。
ちょっと気になってしばらく見ていると、その中にうちのクラスの問題児の顔が見えた。
「仁科…」
あいつの家は、確か新宿駅に近かったはず。
なのになぜ駅構内に居るんだ。
しかもまだ制服のままじゃないか。
声を掛けようと近づいたが、スルスルと人波に紛れて歩いて行くから追いつけなかった。
「すいませ…通ります…」
山手線がちょうど到着したみたくて、どっと人が押し寄せてきて階段を登るのも一苦労だった。
やっとホームに着いたと思ったら、発車間際で。
慌てて駆け込んで、仁科の姿を探した。
しかしちょっと混んでいて、身動きがとれない。
代々木、原宿と止まるたびに外に出て確認してみたが、仁科の姿を見つけることはできなかった。
もう諦めようと渋谷で降りた。
「やっぱ…こんな日なのかな…」
なにやってもうまく行かない日なんだ…