第2章 寒月
そのままぼけっと考えながら家に帰った。
もう夕方の5時を回っていた。
なんだかとても疲れて、薄暗くなったリビングのソファに脱力して座り込んだ。
「あ…飯…」
いつもなら、仕事が終わったら適当に近所で食って帰ってくるのだが。
今日は病院へ行っていたものだから、夕飯には早い時間だし、買ってくるのも忘れてしまった。
「なんなんだ今日は…」
仕方なく、実家に連絡をしてみる。
コンビニ弁当を食べる気分でもなく、こんなでかいガーゼを貼ったまま飲食店に入るのは気恥ずかしかった。
弟が出てくれて、今日飯を食いに行くと伝えると大喜びしてくれた。
13も年が離れてるからか、すごく慕ってくれてるのだ。
早速着替えて、家を出た。
この時間は道路が混むから、電車で向かうことにした。
新宿で私鉄に乗り換え二駅ほどだから、本当は帽子を被って絆創膏を隠したかったが、傷が痛み出したから断念した。
実家に到着すると、父親はもとより母親も妹も(こっちは3つ違いで社会人やってる)まだ仕事とかで、弟しか居なかった。
俺が居た頃からの家政婦さんが飯を出してくれて、なんとか腹をふくらませることができた。
「翔ぼっちゃん、額どうされたんです…?」
「それ、僕も気になってた。どしたの?兄ちゃん」
「深く聞くな…」
「どーせコケたんでしょ?生徒でも追っかけて…」
なぜわかる。