第8章 幾望
「美術教師…美術の先生かぁ…」
「うん…だったら智にも適正あると思うけどな」
「ふうん…」
適正かぁ…そんなことも考えたこともなかった。
俺になにができるのか…何をやっていけるのか…
「まあ、ゆっくり考えればいいよ。まだ時間は…まあそう、のんびりとはしてらんないがな。夏休み使って、いろいろやってみよう」
「うん…」
翔…みたいな、先生に…俺もなれるかな…
「ねえ、その前にさ…」
「うん…?」
「俺も、世界中回ってみたいな」
「ああ…そうだなぁ…」
翔はマグカップの激甘カフェオレを飲み干すと、にっこり笑った。
「行ってみたらいいよ。でも高校生の間は、無理かな…」
「そっか…じゃあ、大学進んだら?」
「そうだなあ…バイトして、どんだけ金貯められるかに掛かってるかな」
「あ、そっか…資金かあ…」
ふふふと翔は笑って。
俺の頭をぽんっと、叩いた。
「そん時は…俺も一緒に行こうか」
「え?翔も?」
「だって…旅はふたりのほうが楽しいだろう?」
「ふふ…ふふふふ…」
心の中が、すっごくあったかくなって…
なんだかお腹の底に、ワクワクが詰まってるみたい。
「お。いい顔しますねえ…大野氏」
「ふふふ…」
「そういうの、夢っていうんじゃない?」