第8章 幾望
美術教師…
「…油絵、習ってみるか?智…」
「え?」
「確か近所に教室があったはず…」
「え…油絵って…え?いきなり?」
「いや、あんなに絵が上手いんだから、絵の勉強したらもっと世界が広がるんじゃないか…?」
「でも俺のって…ただのイラストだよ?」
「イラストでもなんでも、あそこまで描けるのは大したもんなんだぞ」
翔はなにやらメモとペンを持ってきて絵を描いた。
「…なにこれ?」
「ほら…わからんだろう…?」
「う、うん…」
「チワワだ!」
「ちわ…わ…」
確かに大きな耳に、四足歩行の生き物が描いてあるが…
チワワには見えなかった。
ぐしゃっとメモ紙を丸めると、ぽいっとゴミ箱に捨てた。
「…わかったか」
「う、うん…わかった…」
「そうだなあ…智に合った先生が見つかればいいんだけどな…」
「そんなもんなの…?」
「まあ絵画教室は、小学生の時行ってたんだが…俺、あんまり先生とうまく行かなくて…」
あれで絵画教室に通っていたんだ。
別の意味で凄いかもしれない…翔の絵の才能…
「それに…もしも美術教師になるつもりがあるなら、美大受験にはやっぱり絵が描けたりしないとだめだからな…」