第8章 幾望
side O
目が覚めたら、部屋の中は朝日で満ち溢れてた。
隣で眠ってる翔は、まだ目を覚まさない。
メガネをしていない翔は別人みたい。
まつげ長いし。
唇は女の子がカラーリップつけてるみたいに赤い。
そっと手を伸ばして、ぽってりとした唇に触れる。
あったかくて…柔らかくて…
やっぱり、これは翔なんだってわかって安心した。
昨日…翔とひとつになったんだ…
そう思ったら、まだなんか翔が入ってるみたいな気がして。
もぞっとケツを動かしたら、少しマットレスが揺れた。
「ん…?」
半分だけ目を開けて、翔が俺を見た。
ふふっと笑うと、俺を抱き寄せて。
満足げに息を吐き出した。
「智…」
「ん…?」
「おはよう」
「おはよ…」
寝ぼけてんのかな…
やたら機嫌のいい声で。
「んー…眩しいなあ…」
「だって、カーテン閉めてなかったよ?」
「…ん?」
びくっとちょっと翔の腕に力が入った。
がばっと腕を外すと、俺の肩を掴んでじっと顔を見た。
「おはよ…翔…」
「おはよう…智…」
ちゅっとキスすると、翔は少しびっくりした顔をして。
それから笑った。
「…体、痛くないか?」
「ちょっとだけ…」
「そうか…ごめ」
ん、まで言わせなかった。
またキスして起き上がると、素っ裸のまま窓辺に立った。