第2章 寒月
side S
結局、俺の頭の出血は放課後まで止まることがなく。
そんな大出血でもないから平気かと思ったが、相葉先生に強引に早退させられて、近所の病院で傷口を縫ってもらった。
針と糸でやるのかと思ったら、ぽっちんって機械でなんかやられて終わり。二日後に抜糸だと…早いな。
相葉先生のホッチキスみたいなジェスチャー、これのことだったのか…
ガーゼを当てられて、マスクメロンのネットみたいなのを被せられそうになったけど、なんとかテープで行けるってことで…それは勘弁してもらえた。
抜糸までは傷口は濡らしてくれるなってことで、抗生剤を貰って帰ってきた。
「はぁ…なんだったんだ今日は…」
一日で、どっと老けた気がする。
学校を出る前。
大野の母親から、連絡があった。
…留守電を先程聞きました。連絡が遅くなってすいません。智は具合が悪いと寝ております。無事に家に着いたのでご心配なく…
さらさらと抑揚のない調子で…何かを押し殺しているような声音だった。
これ以上は何も話さないという頑ななものを感じて、それ以上は踏み込めなかった。
”私に踏み込むな”
”うちの息子に踏み込むな”
そう直接言われたわけじゃないが、最近特に酷くそう感じる。
正直、得体のしれないものを、大野の母親には感じている。