第8章 幾望
side S
その体を抱き上げると、ひどく軽く感じた。
腰に巻いていたバスタオルも床に落ちてしまって、お互い生まれたままの姿になった。
なぜだかそれがおかしくて。
少し笑ってしまった。
俺が笑ったのを見て、智も少し笑った。
それから俺の首に腕を回してしがみついた。
ぎゅっと、強く。
リビングを出て寝室に入ると、ベッドに智を寝かせた。
窓のカーテンを閉め忘れていて…月は見えないけど、月明かりが窓から差し込んでる。
ぼんやりと明るい室内のなかで、俺を見上げる智は綺麗で。
その裸体は月明かりに照らされて、青白かった。
笑って、俺に手を差し出してくる。
その手を握って、ベッドに倒れ込んだ。
智の体に腕を回して抱き寄せた。
愛おしくて
愛おしくて
胸が破裂しそうなほど、愛おしくて
ぎゅっと抱きしめると、智の腕も俺の体をぎゅっと抱きしめた。
体の触れ合ってる皮膚、全部から智の体温を感じて。
この腕に抱いているしあわせを噛み締めた。
少し智が動いて、俺の顔を覗き込んだ。
ふっと笑うと、俺の額にかかる前髪を上げて、傷にキスをした。
ありがとう…智…
俺も、智の鼻先にキスをした。
不満げな顔をして唇を尖らすから、そこにもキスをした。