第8章 幾望
紐を解いて前を全部開いてしまうと、翔はぎゅっと俺を抱きしめた。
「冷た…」
「まだジュース溢れてるもん…」
笑いながら翔は、俺の首筋を舐めてくれた。
鎖骨を舐めて。
それから胸の上のところも。
あ。
翔の額…
まだあのときの傷が、残ってる。
翔の顔を持って、少し引き寄せた。
「…ん…?」
唇で、傷に触れた。
「もう…痛くない…?」
「…ああ…もう、痛くないよ…」
言いながら、翔は俺をソファの座面に押し倒した。
息が、荒くなってる。
「翔…」
腕にバスローブが引っかかって、うまく動けなかった。
でも両手を広げて翔を見てたら、翔はゆっくりと俺に覆いかぶさってきた。
胸の皮膚が触れ合って。
温かい。
翔の唇が、頬に触れた。
「智…」
優しい、小さな声で…
ちゃんと俺の名前、呼んでくれる。
背中に腕を回して引き寄せた。
もっとその唇で触れてほしくて。
目尻と額に翔のぽってりとした温かい唇が触れていく。
少し顔が離れて、じっと俺の顔を見る。
俺も翔に触れたくて。
もう一度、引き寄せると翔の頬に唇で触れた。
ふふっと小さく笑うと、翔もまた頬に触れてくれて。
ずっとそうやって唇で触っていたら、不意に唇が重なった。