第8章 幾望
side O
本当に綺麗だって思った。
半月のぼんやりと明るい空の下に立っている翔は、本当に綺麗だった。
真っ直ぐに俺を見つめてくる目も。
笑いかけてくれる唇も。
少し風に吹かれて乱れた前髪も。
俺と違って色の白い首筋も。
男なのに、全部綺麗だって。
そう、思ったんだ。
「そろそろ風呂入って寝るか…」
「うん…」
抱きしめていた腕を解くと、翔は体を離した。
「今、風呂洗ってくるから…」
「昼間、洗っておいたよ」
「お、いい子だな」
「一緒に入ろうよ」
「お……っ…!?」
真っ赤になってうろたえ出した。
「だめ…?」
わざと悲しい顔をして見てたら、ますますうろたえてる。
「だっ…あっ…そっ…」
だめだこりゃ…
「シー…」
あわあわしてる唇に人差し指を当てた。
ちょっと不服そうな顔をしたけど、翔のあわあわは止まった。
「一緒に入るだけだよ…?なんにもしないから…」
「…大人をからかうな…」
ちょっと落ち着いたみたい。
「一緒に入ろうって言っただけじゃん…」
「ばーか…もお…」
今頃真っ赤になって。
でもなんでもないって表情を作ろうとしてる。
俺の翔は、世界一かわいい。