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裸の月【気象系BL】

第8章 幾望


きゅっと、智が手を握り直した。

「部屋、入ろ?」
「うん」

先に立って歩き始めたのに立ち止まって。
俺を振り返った。

「ん…?」

なにか言いたいのかなって思ってたら、何も言わない。
じっと俺を見てる。

その目の中に、月が見えた気がした。

「綺麗だな…」
「…え?」
「智は…月みたいに綺麗だ…」

思わず口から出た言葉に、自分でもびっくりしたけど…

でも、本当に綺麗だったんだ。
ぼんやりとした月明かりの中に佇む智は…

いや…
こんなにいろんな事があったのに、一切自分を見失わず立ち上がったその精神が…その素直な心が

美しいのかもしれない。

「なに…言ってんの…」

照れたのか、目を逸らして歩き出した。
そのまま手を引かれて、部屋の中に戻った。

戻った途端、ぎゅっと抱きしめられた。

「翔のほうが…綺麗…」

小さな小さな声で…
泣いてるみたいな声だった。

そっと抱きしめ返した細い体は、少し震えていて。

「そっか…綺麗か…?」
「…うん…」

顔が見えなかったけど、智の体温を感じて…
温かいものが、胸の中を満たしてくる。


智も…そうだったらいいな

あったかいもので、胸の中いっぱいになってたらいいな

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