第8章 幾望
「自分を大事にしなさい…精一杯生きなさいって…」
「そうか…」
智の柵に乗せている手を握った。
「今から、やっていこう」
「…うん…」
頷くと、また夜空を見上げた。
「月…さ…」
「うん?」
「翔だと思った」
「え?俺?」
「うん…翔が…俺のこと、知らないうちに照らしてくれてたのかなって…」
「よ、よせよ…」
「なんで?いいじゃん…」
「そんな綺麗なもんじゃないよ…俺は…」
不思議そうに、智は俺を見上げた。
「だって…智のこと好きになったし…」
「ふふ…」
「本当はもっと他に方法あったかもしれないのに、自分の家に連れてきちゃったし…」
「いいじゃん…」
「…一緒に居たいから…」
「…うん…」
ずっと…一緒に居たいから…
ぎゅっと握った手を握り返してきた。
「…俺も、ずっと…一緒に居たい…」
「うん…」
嬉しくて。
静かに胸にこみ上げてくる、温かさ。
じっと空を見ていると、智の肩が俺の肩にくっついた。
そのままじっと、ふたりで半月を見上げた。
「父さんと母さんも…そう思ったことあるのかな…」
「あるんじゃないのか…?少なくともお母さんには。じゃなきゃあんな…」
あんな風に、自分の夫に執着するはずはないと思うんだけどなあ…
「そっかぁ…」
まだまだ…これから考えて行かなきゃならないことが、智にはたくさんある。
親のことは…多分、大人になっても考え続けていくんだろう。
「ゆっくり、考えろよ」
「うん…」
今はまだ、理解できないことも…
大人になったら…