第8章 幾望
「おお。大野くんは料理をするのか?」
「はい。家庭科の成績、結構良いんです。それに家じゃちょくちょく作ってたし…」
「ほう…そうか。良かったな翔。嫁に来てもらえ」
「ぶほっ…ごほっ…な、何を言うんだよ!?」
「…冗談だよ…大丈夫か?」
「ばっ…馬鹿なことばっか言ってんなよ!?もう、いくぞ!大野!」
「えっ…あ、ああ…」
智を引きずって書斎を出た。
二階の元は俺の部屋だった場所は、家具なんかはそのまま置いていったから、まだ俺の部屋の体を取っている。
そこで夕飯になるまで過ごすことにした。
「…とに…どうしようもない親父だな…」
「ふふ…でも、いいお父さんじゃん…」
あれでも官僚なんだから、世の中不思議すぎる…
「なんもないから、とりあえずベッド座ってて…」
「うん…」
「茶でも飲むか?」
「飲めると思う?」
「…だな…」
智はベッドに腰掛けないで、部屋を眺め渡している。
でも棚に少し学生の頃揃えたCDとか残っているだけで、あまりもう俺のもの置いてないんだけどな。
「ここ、小さい頃から居るの…?」
「いや。ここは俺が高校生くらいになってから建てたから…」
「そうなんだ」