第2章 寒月
『これから先輩の家に行くんだ。一緒に行かね?』
その時、リビングの方からものすごい音が聞こえた。
思わず部屋のドアを開けて様子を伺った。
また凄い音が響いた。
『…もしもーし?どうした?』
「あ…いや…今日は、無理…」
『ねえ…なんかすげえ音してるけど…大丈夫…?』
「うん…大丈夫…いつものことだから…」
『いつも…?』
「あ…いや、なんでもない…」
余計なことを言ってしまった。
誰にも…同級生にも、誰にもこんなこと言ってないのに。
父さんが母さんと離婚すると言い出して。
外に女でも居るみたくて、滅多に家に帰ってこない。
俺のことも見えてないみたいに扱うようになった。
その前から、母さんはアル中で…頭がおかしくて。
絶対離婚しないって、何度も何度も家中めちゃくちゃにして暴れて…
家政婦さんを雇ってるんだけど、何人も辞めて。
つい昨日も、新しく来た家政婦さんが辞めた。
もう誰も来てくれないだろうな…
『…なあ…本当に大丈夫?』
「ああ。大丈夫だよ」
『…こっそり、抜け出してこいよ』
「え?」
『俺、大野に会いたいな』
「え…?俺…に…?」
『うん!おまえに、会いたいから、来いよ!な?』
なんだか、泣きたい
こんなこと言われるの、初めてだった