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裸の月【気象系BL】

第8章 幾望


少し顔を逸して、俯いた。

「あれから一度も会ってないんだ…」
「そっか…」
「こんなこと、初めてでさ…」
「うん…」

心配なのかな…だって、ずっと松本と友達で…
しんどかったとき、一緒に居てくれた人で…

俺にあんなことしたけど、和也さんはずっと松本の傍に居た人で…

「…許してくれって言わないけど…」
「え?」
「和也さんのこと」
「あ、うん…わかってるよ?」
「大野…」
「俺も、世話になったし…だから、わかってるよ」
「…そっか…」

ちょっと安心した顔をした。

「ごめんな…あんなことになって…」
「もう大丈夫だから」
「…また、電話していい…?」

すごく恐る恐る…さっきのお母さんみたいな聞き方で…

「いいに決まってるよ…俺も、連絡する」

そう言ったら、お父さんとそっくりな笑い方をした。

「ははははは…そっか。じゃあ、行くわ!」

照れくさそうな顔をして、松本は戻っていった。

「またな!大野!」

松本はこっちを見ないで手を振りながら走っていった。

「またな!松本!」

遠ざかっていく背中に叫んでみたけど…聞こえたかな。


この一ヶ月後、松本から連絡があった。
和也さんは家を出て、外国に行ってしまったらしいという話だった。

家の人が必死になって行方を探しているけど、幾つも国を経由してて、まだ見つからないってことだった。

和也さんは、自力で飛び立ったんだ。


少し、涙が出た。


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