第8章 幾望
翔はお父さんとお母さんに頭を下げて。
俺も一緒に頭を下げた。
顔を上げると、お父さんもお母さんもニコニコしてて…
「いいんですよ…ちょっとびっくりしたけど…」
お父さんが受け取った菓子箱を、お母さんが受け取って。
「おかげで潤の友達に二人も会えて、とても嬉しいんですよ」
二人って…カズヤのことかな…
あのとき一緒に松本の家に来たって言ってたし…
「ああ…嬉しいもんだな…」
お父さんとお母さんは目を合わせて、ふふっと笑いあった。
…なんだか…懐かしい風景を見た気がした…
「あらあ…岡埜栄泉の豆大福…」
「これ、うちの母が好きで…お口に合えば良いんですが…」
翔がそう言うと、お母さんは喜んだ。
「先生のお母さんとは気が合いそう…あんこがぎっしりで美味しいのよね…」
うふふと笑いながら箱をなでなでした。
なんか…かわいいな…松本のお母さん。
うちの母さんとは…全然違う。
「はい。追加のガムシロ」
松本がリビングに戻ってきて、テーブルの上に容器を置いた。
「先生、追いガムシロする?」
「…イラン…」
それから、お母さんやお父さんに、松本のこと根掘り葉掘り聞かれて…中等部じゃどんな様子だったかとか、どんなとこに遊びに行くんだとか…
その度に松本は嫌な顔をしながら、菓子鉢のお菓子をバリバリと食ってる。
「もお…俺のことはいいでしょお…」
「だってこんなチャンス滅多に無いんだもん!」