第8章 幾望
「どうぞ。お掛けになって…」
そう言ってソファを指し示してくれた。
言われたとおり座ると、お母さんは絨毯に座ってにこにこと俺と翔を見上げた。
「あ、ご挨拶してなかった…私、松本潤の母です」
「あ…えっと、大野です」
こういう挨拶…あんまりしたことないから、どうしていいんだかちっともわからなかった。
ぺこっと座ったまま頭を下げたら、お母さんはうんうん頷いていて。
正しかったんだろうか…
思わず隣に座る翔を見たら、翔もうんうん頷いていた。
なんで同じ動作してんだ…
「大野くんは…」
「えっ?へっ?」
「潤とずっと仲良くしてくれてるの…?」
ちょっと恐る恐るって感じでお母さんは聞いてきた。
「いえ…僕のほうが、仲良くしてもらってるんです」
「そうなの?」
「あんまり僕の方から連絡とかできないけど、松本は…あ、潤…くんは、学校が別々になっても、ずっと忘れないで連絡くれてて…」
そう言ってたら、リビングにお父さんが戻ってきた。
「…だから、すごく感謝してるんです」
「そう…潤の方から、大野くんに…」
「潤は大野くんのことが好きなんだなあ」
お父さんが奥の方で立ったままそう言ったら、キッチンの方から松本の声が聞こえてきた。
「父さん!恥ずかしいこと言わないでよっ!」