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裸の月【気象系BL】

第8章 幾望


絨毯の上には釣り竿やルアーが並べられていて。
お父さんらしき人が、片付けているところだった。
お手入れしてたみたいだ。

「あ、こりゃ…散らかしていて…」
「いえいえ、すいません。ちょっと早く着いたから…」

翔が慌ててペコリと頭を下げた。

「お父さん!だから早く片付けてって言ったのに…」

お母さんが呆れて言うと、お父さんはそそくさと釣り竿を持った。

「すぐ片付けますんで」

そのまま顔を上げたお父さんと、目が合った。
少し考える顔をしていたけど、微笑んだ。

「…元気になったようだね。よかった」
「あ…」

翔から聞いた。
あのとき…和也さんの家から俺を連れ出したとき。
車を運転していたのは、松本のお父さんだって。
だからあのときの俺のことも見てるはずで…

「あの時はっ…本当にありがとうございました!」

本当は菓子折りを渡してお礼を言うって打ち合わせてたのに、思わず頭を下げてしまった。

「え…?大野、父さんのこと覚えてるの…?」
「ううん…ちっとも…」

がくーって松本がして。
その横で、お父さんとお母さんはそんな松本を見ながら、楽しそうに笑ってる。

「座ってください。今、お茶を…」

お父さんが言うと、弾かれたように松本が動き出した。

「母さんは座ってて!俺がお茶淹れるから!」
「でも潤…」
「いいから!座って!」

ちょっと困ったような顔をしながら、お母さんは松本の背中を見送った。

「大丈夫かしら、あの子…」

そう言いながら、俺達を見て。
ふふっと笑った。

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