第8章 幾望
その週末、松本の家に行った。
翔と二人で、菓子折りってやつを買って。
思ったより、こじんまりとした一戸建ての家で。
玄関を開けたおばさんが、とってもテンション高く迎えてくれた。
「まあまあ…!潤のお友達の大野くんね!入って!入って!」
強引に腕を引かれて玄関まで上がった。
翔は後ろで苦笑しながらついてくる。
い、いいの…?
そう思ってたら、翔は笑いながら頷いてくれた。
「おじゃまします…」
靴を脱いで玄関マットの上に立ったら、奥から松本がドタバタと出てきた。
「ちょっと母さん!興奮しすぎ!」
「だってぇ…潤のお友達…」
「また倒れるよ!?俺がやるから、おとなしくしてて」
「はあい…」
お母さんはすごすごと松本の後ろに下がった。
「ごめん…びっくりしたろ…?」
「う、ううん…?」
ちょっとテンションの高さにびっくりはしたけども。
「先生も、上がって?」
「ああ。お邪魔します」
翔は靴を脱いで上がってくると、俺の背中を押した。
「緊張するなよ…」
ぼそっと囁くとにやりと笑った。
し、してないし…
「こっちこっち。どうぞ」
出されていたスリッパを履いて、松本の後についてドアを入ると、そこはリビングのようだった。