第8章 幾望
side O
「ぶぶぶぶぶ…もお…おもしれぇんだから…」
カズヤはまだ笑ってる。
体育館に続く渡り廊下まで一気に来ると、柵に背中で寄りかかってまだゲラゲラしてる。
「…あんまからかってやんなよ…」
「えー?でも凄いよね…あんな先生、いるんだぁ…」
「まあな…」
だから…救われたんだと思う。
あんな素直に…真っ直ぐな先生だから…
「よっぽど周りに恵まれていたんだろうなあ…」
「…俺も恵まれてる」
「え?」
「恵まれてるから…今ここに居られる…」
そう言って、カズヤの隣に並んで柵に寄りかかった。
柵からは中庭を挟んでグラウンドが見渡せる。
部活をやってる連中が、元気よく動いてるのが見えた。
「…そっか…」
「うん……」
それ以上、深くは聞いてこなかった。
でも多分…カズヤは俺が言いたいことはわかってくれたと思う。
グラウンドでは、野球部が大半の面積を占領して部活してる。
カキーンといい音が響いた。
外野を守ってる連中が大きな声を出しながら、ボールを追う。
「…もう。体、大丈夫?」
「おん。流石に月曜はキツくて休んだけど…火曜からずっと学校来てるよ」
「そっかあ…俺のほうがサボっちゃったか…」
いいながら、カズヤもグラウンドの方に体を向けた。