第8章 幾望
「な、なんだよ!?なにがそんなおかしいんだよ!?」
「あー…笑った…」
「ちょっと、相葉先生!」
「え?ああ…そうだねえ…翔ちゃんがあんまりにもストレートで…素直だからね」
「は?」
「嘘つかなかったから信じる。そんなバカ正直にそう思ってる人間なんて、そんなに居ないってこと」
「あ…」
なんか…ひどく俺が馬鹿みたいじゃないか…
「あ、怒らない怒らない。ほら、俺って捻くれてるからさ?」
仁科がまたぺろっと手を振った。
「…おまえ手首痛いから休んだんじゃなかったのか?」
「ああっ…激痛が…!」
「カズヤ!大丈夫か!?」
相葉先生は、仁科の腕を取るとじっと見た。
「こ、これはいかん!カズヤ、治療だ!」
「あい!相葉先生!」
ドタバタとふたりは逃げていった。
「ちょっ…!おまえらっ!!」
「ぶっ…」
慌てて立ち上がったのを、大野に笑われてしまった…
「むう…」
仕方なく椅子に座り直して。
それから紙コップに入ったごぼう茶を啜った。
「センパイ、もういいの?」
「あ…うん…もう、お礼言えたから…」
五関が俺をまた見た。
「先生、俺…嬉しかったです。本当に、ありがとうございました」