第8章 幾望
「あの…俺、居てもいいの…?相葉先生に話があってきたんじゃないの…?」
職員室に帰ろうと思って立ったら、無理やり相葉先生に椅子に座らされて。
お茶が入るまでのあいだ、非常に居心地が悪かった。
仁科がぺろぺろっと手を振った。
「いいのいいの。櫻井先生を探して来たんだから」
「え?俺?」
「そう、ね?智」
「…うん…」
大野は、ちらっと俺を見ると少し赤くなって。
それから五関の方を向いた。
五関は大野に向かって、一度頷くと俺の方に向き直り、ごくっと唾を飲んだ。
「…ぼ、僕…」
「うん?」
五関の声は小さくて。
思わずちょっと身を乗り出した。
「はいはい。お茶入ったよ。熱いから気をつけてね」
紙コップに入った、熱いごぼう茶が出てきた。
「あ、相葉先生ありがと~」
「…ありがとうございます」
「ありがと…」
それぞれお礼を言うと、少しずずーっと茶を啜った。
三つ子みたいに揃ってたから、ちょっと吹いた。
「……?」
大野に、怪訝な顔で見られた。
「で?五関くん、お話の続きは?」
相葉先生もくっくと笑いながら、先を促した。
「あ…僕、その…お礼が、言いたくて…」
「え?俺に?」
「…はい」
紙コップを丸テーブルに置くと、五関は背筋を伸ばした。