第2章 寒月
side O
「…ばっかじゃねえの…」
結局…留守電を最後まで聞いてしまった。
無事に帰宅していますでしょうかって…
留守電に入れることかよ?
明日も校門当番って…
「……ばっかじゃねえの」
ゴロリとベッドの上で寝返りを打った。
あいつは…櫻井はきっと
俺のことなんてわからない
わかりっこない
うちの高校の卒業生だっていうから、ボンボンなんだろうし。
人に騙されたことも、裏切られたことも…きっとないんだろう。
そんなやつに、俺のことなんかわかりっこない。
誰も……俺のことなんか……
”寂しいのなら、寂しいって言わないと…”
「…うるせーっ!」
突然浮かんだ声。
思わずクッションを壁に投げつけた。
息が少し上がる。
フローリングの床に落ちたクッションを見つめたまま、動けない。
仁科なんて…俺には未知の生物過ぎて。
あんな奴の言うこと、真に受ける必要なんてない。
裏でなにやってるかも、よくわからない…
成績だけはダントツでいいけど、学校に来たり来なかったり。
あいつがゲイだって公言してるせいか、先生たちの扱いも腫れ物に触るようで。
「くそ…」
誰も、俺のことなんかわかるわけないのに。
櫻井や仁科の顔がちらついて…うるさい