第7章 繊月
「智が好きなものに興味を持って夢中になったら、離れていくっていう妄想に取りつかれていたんだと思う。それに…」
ちょっと言いにくそうに、ドアに肘を掛けると片手でハンドルを持った。
「智とお父さんを、重ねて見てたと思う。だから友人も制限して好きなものも自分でぶっ壊して、復讐していたんだと思う」
「…俺に…復讐…?」
「お父さんの身代わり、だな」
「ああ…」
父さんの、身代わり。
だから捨てるんだ。
だから切り刻むんだ。
だから殴るんだ。
だから俺に罪をなすりつけてほくそ笑んでたんだ。
「…そっか…」
そうだったんだ…
俺がなにかしたとかじゃなく…
俺を通して、父さんに復讐してたんだ…
「…めんどくせぇの…直接父さんにすればいいじゃん…」
「それをしたら…永遠にお父さんのことを失うからな…」
「ああ…そう…」
執着するような、男かよ…
あんな奴…
「…もうちょっと…考えてみる…今は、わかんない」
「そうだな…まず、男と女で生物が違うからな」
「生物…」
「そう。別の生き物だからな。永遠にわかりあうなんて、無理なのかもしれない」
「…同じ人間なのに…?」
母親なのに…?