第7章 繊月
「そうだな…同じ人間なのにな。親は、自分の子供にそう教えていかなきゃいけないのにな…弱いな」
「え?」
「弱いんだよ…おまえのお父さんも…お母さんも…」
「弱い…?大人なのに?」
「そう。大人なのに、智に甘えてたんだよ」
「俺に?なんで…?」
「智が黙って受け入れていたからだよ。他の大人に言わず、黙って耐えていたから」
だから、何してもいいって…
そう思ったってこと?
納得行かないのが顔に出てたのか、次の信号で止まった時、翔が俺の顔を見て、笑った。
「…笑うなよ…」
「ごめん」
ふうっと息を吐いて、また俺のこと見た。
オレンジ色の街灯が、翔の顔の半分を照らしてる。
今までみたことないような表情で…
どうしていいかわからなくなって、目を逸らした。
「でも…そんな智だから…みんな助けたんだぞ…」
「え?」
「頑張って、なんとかしようって耐えていたから…だから、力を貸そうって思ったんだと思うぞ?」
「…翔は…?」
「俺?」
ふふっと笑った。
その時、信号が青になった。
前を向いたまま、翔はまた車を発進させた。
「俺は、智が好きになった」
「えっ…!?」
「だから必要以上に踏み込んで、助けに行った」
そう言ったまま、ずっと前を向いている。