第7章 繊月
「…智…?」
開けていたドアのとこで、翔は入ってこないで立ってる。
「ん?」
「入って、いい?」
「いいよ。入って…」
出てくる時、慌ててたから部屋はちょっと散らかってた。
右手にあるベッドの上の布団もグシャグシャのままで。
布団を掛け直した。
「なにか手伝う?」
「ううん…大丈夫…」
クローゼットから制服を出して…
デスクに乗ってた教科書とか、その他諸々をベッドの上に放り出した。
その間、翔はじっと部屋の中を見てる。
「なに…?あんま見ないでよ…」
なんか恥ずかしい。
「いや…智はここで育ったんだなあ…」
「まあね…」
生まれた頃から、ここに居る。
だけど、もうここは…
俺の居場所じゃない。
「…なに、持っていけばいいかわかんないや…」
「じゃあ、学校に必要なものをとにかく選ぼう」
「うん…」
かばんに服とか詰めるのを、翔は手伝ってくれた。
その作業をしながら、ぽつりと翔は言った。
「智の部屋…作るから…」
「え…?」
「玄関のすぐ横の部屋、空いてるんだ。そこ、おまえの部屋にするから…後で、家具買おうな」
「え…?」
「一緒に、選ぼう。カーテンも…全部…」
「……うん」
俺の、居場所…