第7章 繊月
人の命は…昼間の月みたいに儚くて、美しい…
笹野先生はそう言ってた。
父さんも…母さんも…
あの人達の命は、美しいんだろうか
「…わかんねぇや…」
今は…まだ…
「ん?なんか言った?大野くん」
「いや…」
相葉先生が、振り返ってにっこり笑った。
「学校来たら、五関くんに会ってやってね?」
「え?」
「またぼーっとしてたのお?だから、五関くんが大野くんにお礼言いたいって言ってたんだって」
「あ。ああ…それ…」
別に助けたわけじゃないし…
お礼言われるなんて、嫌だった。
「別にいいのに…」
「まあまあ。そのくらい、五関くんには嬉しかったんじゃないの?」
嬉しい…のか…?
カズヤにあんなこと言われてたのに…
「あ、翔ちゃん。このへんで」
「はい。ちょっと待って…」
路肩に車を寄せて、ハザードランプを出して車は停まった。
「じゃあ、明日ね」
「ほんと色々ありがとうございました。相葉先生」
櫻井先生が、相葉先生に頭を下げた。
「いいってことよ。うちの大事な生徒のことじゃん。ね、大野くん。体調だめそうなら無理しないでね?あと1日くらい、休んでいいんだからね?」
「あ、はい…ありがとうございました」
ペコリと頭を下げると、ぽんと頭に手が乗っかった。
「いつでも。保健室、おいで」