第7章 繊月
食器を片付けて、残った夕飯は相葉先生が小分けにして冷凍してくれた。
それから相葉先生が電車で帰るっていうのを無理やり引き止めて、櫻井先生が車で送ることになった。
先生が、俺の服がたばこくさいって言ったら服を貸してくれて。
それに着替えて3人で家を出た。
ちょっとジーパンの裾が余って歩きにくいから折り曲げた。
先生、意外と足長いんだ…
近所の駐車場について、先生が車の鍵を開けた。
「いい車持ってるじゃーん」
相葉先生がおどけて言う。
「これ、親のなんで…借りてるだけです」
「で、しょうね。こんなの翔ちゃんの給料じゃ買えないでしょ」
「うん」
高い車なのかな…
カズヤのパパさんの車も高そうだったけど、あまり興味がないからよくわかんないや。
相葉先生が、道案内するとかで助手席に座った。
俺は後ろのシートに座った。
「じゃあ、行きますよ」
「はあい。とりあえず新宿方面で」
相変わらず、車内は相葉先生が一人で喋ってた。
俺は車の窓から、外を流れる風景を眺めてた。
夜の街は、無責任にキラキラしてる。
カズヤのパパさんの車で送ってもらったことを思い出した。
何年も前な気がするけど…あれから何日も経ってないんだよな…
「あ…月だ…」
建物の隙間から見える空に、半月が浮いてた。