第7章 繊月
そう言って、ぐふふと笑った。
「そういう大人になると、教頭先生みたいになっちゃうからね?」
「ちょ、相葉先生」
「なあんでよお…いいでしょお?教頭、裏金貯めまくってんじゃん!テーラードのスーツなんか着て、ハゲチャビンに似合わねーんだよっ!」
「ちょ、ちょ、ちょ!」
「あいつも五関くんの件でついでにクビだな!学校長にチクッとこ」
「酒のんでないよねえ!?」
「ゆーあーふぁいあど!」
「俺ぇ!?」
なんのことだかわかんない言い合いを始めたから、ぼんやりと家のことを考えた。
誰も…居ないんだ。
もうあの家には、誰も…
俺も、もう…居ない…
「…大野…?」
「あ、ごめんなさい。ボーッとしてた…」
「今の話聞いてた?」
「え?教頭のあたりから聞いてない」
がくーって相葉先生が項垂れた。
櫻井先生は、ホッとした顔をした。
「…ていうか、大野」
「え?」
「お父さんは愛人の家にいるのか?」
「…多分…だって、中等部のときから、全然家に帰ってこないもん…」
「はぁ…なんなんだ、あの野郎…」
ぐしゃっと前髪を掴むと、天井を見た。
「荷物、一緒に取りに行く」
「え?」
「俺が車出すから」