第7章 繊月
「それにまだクスリが体に残ってるかもしれないし…」
「そう…だねぇ…」
ふたりとも、考え込む顔になった。
「…体はもう、平気だよ」
「大野…」
「ほんと?大野くん」
「うん…大丈夫。だから、学校行くよ」
ちゃんと高校生、しなきゃいけない
今回助けてくれた人たちのために…
ちゃんと普通に生活できるようにならないと。
そのためにみんな、動いてくれたんだから。
「相葉先生…櫻井先生…」
「ん?どうした?」
「本当に…ありがとうございました」
箸を置いて、座ったまま頭を下げた。
「…家に、教科書とか取りに行ってきます。父さんはどうせ愛人のとこでいないだろうし、母さんがいないんなら戻っても平気だと思うし…」
それだけ言って、顔を上げた。
相葉先生はにこにこしてて。
櫻井先生は真顔になってた。
「え…?なに…?」
「大野くん。ちゃんとお礼言えるの、素敵だよ」
「す…すてき…?」
「そう…そういうとこ、失っちゃだめだよ…?」
「え?」
「…大人になるとね…自分のことで精一杯で、感謝することを忘れるんだよ…」
「そう…なの…?」
「そう。別にいつまでも感謝してろって言わないけどさ。忘却の彼方に飛ばしちゃう奴もいるしね」