第7章 繊月
夕飯は、賑やかで…
相葉先生が一人で喋ってた。
楽しかったけど、和也さんの家とはまた違って。
安心できる空気で。
櫻井先生も、ずっと穏やかな顔で笑ってて。
時々、俺の方を見ては「なんか取ってやろうか?」って言う。
でももう…お腹、いっぱいだよ…
「やっぱ、酒ないと腹一杯になるのはええわ…」
「そういうの大学時代で学ぶもんでしょうよ…」
「俺は、必死で勉強とバイトしてたの!生活費は自分で稼いでたんだから」
「…なるほど…」
相葉先生のほうが、一枚も二枚も上手みたいだ。
「相葉先生が苦学生してたのなんて、想像つかない…」
「よくそう言われる~」
ケラケラ笑ってる相葉先生には、苦労してきたとか家族とうまく行ってなかったとか…そんな陰はちっとも見えなくて。
相葉先生は、俺と違って
強い人…なのかな…
「あ、そうだ。大野くん、学校…どうする?」
「え?」
そうだ。学校…すっかり忘れてた…
「それが…」
櫻井先生がテーブルに肘をついて考える顔になった。
「…制服とか教科書が…」
「あっ…そうだったね。そうだ…制服とか、大野くんのお家に取りに行かないとないんだ?」
「家に…」
そうだ…全部、家に置いてきた…