第7章 繊月
…言ってしまった…
相葉先生が、ニタリと笑った。
背中に冷たいものが伝っていくのを感じた。
認めてしまった
昨日から、胸の中にあるこのもやもやした感情の正体を…
愛、だと
…いや…
もうとっくに認めてた
さっき、大野にキスしたあの瞬間から…
本当はわかってた
「そう…安心した…」
「え…?」
「…ちゃんと応えてやんなよ。翔ちゃんなりに」
「俺、なりに…?」
「大野くんのこと、愛してるなら…翔ちゃんと一緒に人生歩めるよう、導いてやんなよ」
俺と一緒に…人生を、歩む…
「否定されれば、大野くんはまた…戻っていくよ。闇の中に」
暗い中で…一人…
あんな荒れた部屋の中で一人…
大野の家で佇んでいた背中を思い出した
もうあんな背中…見たくない
「もう…戻さない…」
「そう。それができるのは、翔ちゃんだけだよ…?」
そう言って、俯いた俺の顔を覗き込んできた。
それからポンと俺の肩に手を載せた。
「俺だけ…?」
「あんなさ…助け出したときの、大野くんの顔みたら…俺じゃだめだし、他のヤツじゃもっとだめだってわかるでしょうよ…」
「え?」
「…翔ちゃんがずっと家に居ていいって言ったときの、大野くん凄く嬉しそうだったじゃん…」
あの時は…自分の感情に精一杯で…
思い出さないようにしてたけど、記憶が蘇ってきた。
俺の腕の中で…嬉しそうに微笑んでる大野の顔…
とても、幸せそうだった
「…うん…俺も、そう思う…」
そう答えたら、相葉先生は俺の肩から手を外した。
「よかった。それが聞けて…」
床においた買い物袋を手に取って、先生はリビングに入っていった。