第7章 繊月
それからすごく真面目な顔をした。
「…教師だから、大人だからって思ってる?」
「え?まあ…」
「身を引かなきゃとか、そんな馬鹿なこと考えてない?」
「…それは…」
答えに窮してたら、相葉先生はため息を付いた。
「逃げるんだ?翔ちゃん。ここまでしておいて」
「え……」
「大野くんのご両親みたく、逃げるんだ?大野くんの気持ちから、逃げるんだ?」
「そんな…それとこれとは話が…」
相葉先生は買い物袋を床に置いた。
「翔ちゃんは、愛してんの?」
廊下の壁に寄りかかりながら、今までみたこともないような冷たい目で俺を見た。
「…愛…?」
「なにそれ?ここまでしといて自覚してないわけ?」
心底呆れたみたいな顔された。
ちがう…ちがうちがう…
「…じゃあ俺が大野くん引き取ろうかな…」
「えっ…」
「いいじゃん。俺ならバイだし?大野くんのこと、身も心も愛してあげられるもん」
「ちょっ…何いってんだよ!?」
「だって親子にはなれないもん。彼は翔ちゃんのことが好きなんでしょう?愛が欲しいんでしょう?彼が今、一番欲してる愛情を感じさせるなら、恋人になるのが一番だもん」
恋人…
また頭の中が真っ白になった
そんなの、許せるはずねえ
「…大野はっ…俺のだっ…愛してるんだっ…」