第2章 寒月
「ふうん…留守電だったの…」
相葉先生は額の絆創膏を取って、ガーゼで傷口を圧迫止血してくれてる。
「はい…あいつ、家に帰ってないことないと思うんですけど…」
「ふうん…あ、そういえばさ、3年の…ほら、あのちっちゃい子」
「あ、五関ですか?」
「そうそう。五関くん、今日教室行けたみたいだよ」
「え…あれ…?もしかして…登校できてなかった、とか…?」
「あ、そっか。翔ちゃん、もう2年の担任だから知らないか…」
相葉先生はガーゼをぎゅうっと押さえると、ため息をついた。
「4月中頃から保健室登校に逆戻りしてたんだけどね…やっとちょっとずつ教室戻っててね。今日は朝から教室行けたみたいだよ」
「そう…だったんですか…」
昨年度まで副担として、今の3年の連中の英語の授業を受け持っていたんだが、その中で五関っていう奴が深刻ないじめ被害に遭っていた。
最初は本人が隠そうとして、なかなか実態がわからなかった。
でも異変に気づいた保護者からの通報があって、やっと五関に関連するいじめ問題が表面化したという経緯がある。
どうやら国立特進コースの連中が、受験ストレスで五関に八つ当たりしてたというのが真相らしい。